平田王子<ひらたきみこ>ボサノバ・ライブ
夏はボサノバ
平田王子の弾き語りで、夏の宵を過ごしませんか?
DAY 7月31日 <金曜日>
M・FEE ¥500
TIME 20時頃と22時頃の二回
予約可 03−3405−9955
e-meil walkin33@trad,ocn,ne,jp
Cafe の空耳 <15>
罪深き人は・・・
シトシトふり続く雨を、カフェの窓越しに見ていた。
そして、窓ガラスにあたりしたたり落ちる雨粒を、そっと指でなぞった。
なぞった指先に、赤信号で待つあなたを見つけた。
あれはいつだったかと、あなたに初めて会った時が頭を過った。
あの日、私は新婚の沙耶のマンションにいた。
沙耶から旦那さまの友達が集まるホーム・パーティーを手伝って欲しいと連絡があったのだ。
今から思えば、沙耶は三年目の彼との破局で傷ついている私を、元気づける目的もあったらしいが。
新居は、隅田川から東京湾を望む高層マンション。
花火見物には絶好の場所だ。
当日は両家の親族も集まりそうで、沙耶は今から頭痛の種だと嘆いていた。
ホーム・パーティーは昼過ぎから始まった。
沙耶の旦那さまは、元ラグビー部。
巨漢の男どもの集まりに、料理の量も半端ではなく、沙耶と私は悪戦苦闘だった。
そんな私達の手伝いをしてくれたのが、あなただった。
あなたはラグビー部の後輩らしく、大きな体を小さくして私達の手伝いをしていた。
しぐさが可愛かった。
笑顔が爽やかだった。
後日沙耶から「あなたを気に入ったみたい、だからアドレスを教えていいかしら?」と連絡があった。
しかし未だ傷の癒えていない私は躊躇し、一度は断ったの。
でも結局、沙耶の強引な説得に屈してしまった。
強引と言っても沙耶は沙耶で、傷ついている私を気ずかっての事だったのだけれでも。
そして、食事だけならとの安易な気持ちが、あなたとの始まりだった。
私の中にも、あなたに会っていることで、少しは傷が癒えるのではとの思惑もあった。
そんな私の邪悪な気持ちを、あなたは優しく包み忘れさせてくれた。
そして半年。
私はあなたの明るさと優しさに、徐々に心が動き始めた。
あなたを好きになれるかもしれない、とも思い始めた。
あの人からメールが来るまでは。
<俺、おまえじゃないと駄目なんだ>
勝手な言い草とは分っているの・・・
でも、ごめんなさい。
このままでは、結局あなたを苦しめる事になってしまう。
だから今日(ごめん、もうあなたには会えない)と言おうと心に決めた。
私も罪深い一人。
彼は屈託のない笑顔で、カフェのドアを開けた。
「ごめん!待った!」
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